「お友だちの子はもう自分の名前を書けるみたい」「うちの子、ひらがなまだあやしいけど大丈夫かな」――入学が近づくと、ひらがなのことで急にそわそわしてしまうお母さん・お父さんは、本当に多いです。
わたしは小学校の教員を10年つとめ、いまは3人の子の親で、うち1人が小1です。1年生に「初めてのひらがな」を教えてきた立場と、わが子のひらがなに付き合ってきた親の立場。その両方から、よく聞かれるこの疑問に、本音でお答えします。
先に結論をお伝えします。入学前に、ひらがなを「全部きれいに書ける」必要はまったくありません。学校は「ゼロから教える前提」で授業を組んでいます。ただし、「自分の名前が読める・なんとなく書ける」と、本人がぐっとラクになる――これがいちばん正直なところです。理由をお話しします。

学校は「書けない前提」でスタートする
まず安心してほしいのは、小学校はひらがなを一文字ずつ、ていねいに教えるということです。書き順も、形も、「とめ・はね・はらい」も、授業でしっかり扱います。入学時点で書けない子がいることは、学校はもちろん織り込み済みです。
むしろ教員として正直に言うと、自己流のクセがついた字を直すほうが、ゼロから教えるより大変なこともあります。書き順がバラバラのまま覚えてしまうと、あとで本人が苦労します。ですから「入学前に全部完璧に」とがんばりすぎる必要はありません。あせって詰め込むより、これからお話しする「土台」のほうがずっと大事です。
では、入学前にあると本当にラクなのは?
「全部完璧」はいらない。でも「あると本人がラク」なものはあります。優先度の高い順に挙げます。
① 自分の名前が「読める」(最優先)
入学直後の学校は、持ち物・ロッカー・くつ箱・プリント――あらゆるところに名前が書いてあります。自分の名前が読めると、「これは自分のものだ」と自分で判断でき、毎日の生活がぐっとスムーズになります。書けることより、まず「読めること」が大事です。
② 自分の名前が「なんとなく書ける」
プリントやノートに名前を書く場面は、初日からたくさんあります。きれいでなくてOK。形がくずれていても、自分の名前を書こうとできるだけで、本人の安心感がまったく違います。「自分でできた」という小さな自信が、学校を好きになる第一歩になります。
③ ひらがなが「だいたい読める」
書けなくても、絵本や黒板の文字がなんとなく読めると、授業が「知っていることの確認」になり、安心して臨めます。読みは、絵本の読み聞かせや、身のまわりの文字(看板・お菓子の名前など)で、遊びの延長として自然に身につきます。

むしろ大切なのは「字」より「えんぴつを正しく持てるか」
これは現場で強く感じたことです。ひらがなを何文字書けるかより、「えんぴつを正しく持てているか」のほうが、その後の伸びに効きます。持ち方にクセがあると、長く書くと手が疲れ、字も安定せず、本人が「書くのいや」になりやすいんです。
そして持ち方とセットで大切なのが、手や指の力・器用さです。これは机に向かわなくても育てられます。
- お絵かき・ぬりえ(線をなぞる・はみ出さない練習になる)
- ねんど・シール貼り・折り紙(指先を使う)
- ボタンやファスナーの開け閉め(生活の中で手先が育つ)
「ひらがなドリルを何枚やったか」より、こうした遊びの中で手を育てておくことのほうが、入学後の「書く力」につながります。
やってはいけない「先取りのやりすぎ」
熱心なご家庭ほど陥りやすいのが、「書けるようにさせよう」とがんばりすぎて、子どもが文字を嫌いになるパターンです。これは教室でもときどき見かけました。すでに書けるのに、「もっときれいに」と求められ続けて、書くこと自体が苦痛になってしまった子です。
入学前にいちばん避けたいのは、字が書けないことではなく、「勉強・文字=いやなもの」という気持ちを持って入学することです。だからこそ、ひらがなは「できたら花マル」「楽しくできる範囲で」が鉄則。無理に練習させて泣かせてしまうくらいなら、絵本を一緒に楽しむほうがずっと価値があります。
まとめ:完璧でなくていい。土台は「好き」と「手」
入学前のひらがな、結論はこうです。
- 全部きれいに書ける必要はない。学校はゼロから教えてくれる
- 「自分の名前が読める・なんとなく書ける」とラク
- 字の数より「えんぴつの持ち方」と「手先の器用さ」が大事
- いちばん避けたいのは「文字嫌い」で入学すること。楽しくできる範囲で
まわりと比べると、つい不安になりますよね。でも、本当に大切なのは入学時点のスタート地点ではなく、「学ぶことが好き」という気持ちと、書くための土台です。そこさえ守ってあげれば、ひらがなは学校でちゃんと伸びていきます。どうか気負わず、お子さんのペースを信じてあげてくださいね。
なお、ひらがな以外も含めた入学までの準備の全体像は「【2027年度入学】入学準備スケジュール」に時期ごとにまとめています。また、入学後の1年生の生活を先にイメージしておきたい方は「小1の夏休みの過ごし方」も、あわせて読んでみてくださいね。
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元小学校教員(指導歴10年)/3児を育てる現役の親(うち1人が小1)
教室で見てきたことと、わが子で試したことを土台に書いています。
「正解」ではなく「一緒に考えるヒント」として読んでもらえたらうれしいです。

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