「9+4のような、繰り上がりのある計算になったとたん、急に手が止まる」「繰り下がりの引き算になると、いつも間違える」。算数の中でも、繰り上がり・繰り下がりは、多くの子が最初にぶつかる大きな山です。
わたしは小学校の教員を10年つとめてきましたが、ここでつまずく子は、どの年にもたくさんいました。そしていま、小1の子を育てる親として、宿題の様子を見守る立場にもなっています。教える側と親の側、両方から見えてきた「家での教え方」を、今日は具体的にお伝えします。
先に結論です。繰り上がり・繰り下がりのカギは、「10のまとまり」が頭と体で分かっているかどうかです。ここがあいまいなまま、やり方だけを覚えさせようとすると、どこかでつまずきます。逆に、ここをていねいに固めれば、少しずつ乗りこえていけます。順番にお話ししますね。
なぜ、繰り上がり・繰り下がりでつまずくのか
たとえば「9+4」を計算するとき、子どもは頭の中で、実はこんなことをしています。
- 9に、あと1で10になる(=1がほしい)と考える
- 4を「1」と「3」に分ける
- 9+1で10、のこりの3を足して13
これは「10の補数(あといくつで10になるか)」と「数を分ける(4を1と3に)」という2つの力を、同時に使う作業です。大人にはかんたんに見えますが、6〜7歳の子にとっては、かなり高度なことをしているんです。
教室で見てきて思うのは、ここでつまずく子の多くは「やり方を知らない」のではなく、その手前の「10のまとまり」があいまいだということです。「あと いくつで 10?」にパッと答えられない状態で繰り上がりに進むと、どうしても苦しくなります。
なお、多くの学校では、小1の2学期後半から3学期ごろに学ぶ内容です(学校や教科書によって時期は少しずつ違います)。いままさに「山」に向かっている、というご家庭も多いかもしれませんね。
家庭でできる教え方ステップ
ステップ① 「10の合成・分解」を遊びで固める
繰り上がりに進む前に、まず「あといくつで10になるか」を、考えなくても答えられるようにしておきます。これがすべての土台です。
- 「7は、あといくつで10?」→「3!」
- 「10は、6といくつ?」→「4!」
お風呂や、お散歩の途中にクイズにすると、楽しく身につきます。指10本を使うのもおすすめです。7本立てたら、残りは3本。目で見て確かめられるので、子どもがすっと納得します。ここがスラスラになるまでは、繰り上がりを急がないのがコツです。
ステップ② 「10のまとまり」を実物で見せる
次に、10個で1つのまとまりになる感覚を、目で見て体感させます。10個入りの卵パックや、マスのある製氷皿が便利です。おはじきやボタンを1つずつ入れていって、「10個でいっぱいになったね」を何度も経験させます。
「9+4」なら、まず9個入れて「あと1でいっぱい」を確認します。4個のうち1個でパックをいっぱいにして、残りの3個は新しい場所へ。「10のまとまり1つと、ばらが3つで、13」。この目で見える経験が、頭の中の計算につながっていきます。

ステップ③ 繰り上がりは「さくらんぼ計算」で見える化
学校でもよく使われる方法ですが、足す数を2つに分けて書くやり方(よく「さくらんぼ計算」と呼ばれます)は、家でもとても使いやすいです。
「9+4」なら、4の下に小さく「1」と「3」を、さくらんぼの枝のように書きます。「9に1を足して10、10に3を足して13」。頭の中の作業を、紙の上に見えるようにするのがねらいです。慣れてくると、書かなくても頭の中でできるようになる子が多いです。最初は面倒くさがらず、ていねいに書かせてあげてください。

ステップ④ 繰り下がりは「10から引く」を先に
繰り下がり(たとえば13-4)は、繰り上がりよりさらに難しく感じる子が多いです。ひとつの考え方として、「13を、10と3に分ける」→「10から4を引いて6」→「6に、のこりの3を足して9」という流れで見せる方法があります。
ポイントは、「ばらの3」から引こうとせず、「10のまとまり」から引くこと。13の「3」から「4」は引けないので、まとまりの10から引くんだ、という感覚を、これも実物(卵パックのまとまりを崩す)で見せると、すっと入りやすくなります。
ただし、繰り下がりの教え方は、学校によって少し違うことがあります。「10から引く方法」のほかに、「引く数を分けて順に引く方法」を使う学校もあります。お子さんが学校で習っているやり方を、教科書や連絡帳、ノートで確認して、できるだけ学校の方法に合わせるのが、混乱させないコツです。
つまずいたときに気をつけたいこと
この単元は、つまずくと「算数きらい」につながりやすい大事な場面です。次のことを、頭の片すみに置いておいてください。
- 指を使うのを止めない。 指は立派な計算の道具です。無理に暗算させると、かえって遠回りになることがあります。
- スピードを求めない。 正確にできることが先です。速さは、あとから自然についてくることが多いです。
- 1日にたくさんやらせない。 難しい単元こそ、「少しずつ・毎日」が続きやすいです。
- 「なんでこんなのが分からないの」は言わない。 子どもは、いま必死で考えています。「ここまでできたね」と、進んだところを認めてあげてください。
教える側がついイライラしてしまう気持ちも、よく分かります。そんなときは我が子に勉強を教えるとイライラする…元教員でもそうだった話も読んでみてください。
「うちの子だけ?」と思ったら
何度やっても10のまとまりが分からない、数を分けること自体をいやがる、という様子が長く続くときは、担任の先生に「家ではこんな様子です」と伝えておくと安心です。学校での様子を教えてもらえることもあります。心配だから相談する、というより、「情報を持ち寄る」くらいの気持ちで大丈夫です。
小1の勉強全体のつまずきについては小1で勉強につまずく子の共通点と、入学前にできること、毎日の学習時間の目安は小1の家庭学習、1日どれくらい?でも書いています。
まとめ:カギは「10のまとまり」
繰り上がり・繰り下がりは、多くの子がつまずく山です。でも、順番を整えれば、ひとつずつ進んでいけます。
- まず「あといくつで10?」をスラスラに
- 「10のまとまり」を実物で体感させる
- さくらんぼ計算で、頭の中を見える化する
- 繰り下がりは、学校のやり方に合わせる
- 速さより、正確さ。指もどんどん使う
ここを乗りこえると、算数がぐっとラクになります。お子さんのペースに合わせて、いっしょに「10のまとまり」を楽しんでみてくださいね。
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元小学校教員(指導歴10年)/3児を育てる現役の親(うち1人が小1)
教室で見てきたことと、わが子で試したことを土台に書いています。
「正解」ではなく「一緒に考えるヒント」として読んでもらえたらうれしいです。

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